各種アミノ酸の働き

タンパク質をつくり医療にも貢献している基礎栄養

内藤 博 著 1999.04.24 発行 ISBN 4-89295-396-2 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)

個々のアミノ酸の性質の違い

各種アミノ酸の働き

特殊な生理作用を発揮する
これまでの話は、体のタンパク質を作る材料としてのアミノ酸の役割について述べたもので、個々のアミノ酸はタンパク質という建物を作るときの煉瓦のように、それぞれのアミノ酸の違いにはあまり関係がないような印象を与えます。
事実、アミノ酸スコアの考え方は、必須アミノ酸の種類を問わず、理想的なパターンに最も不足するものが栄養的利用価値を決めている(制限アミノ酸)ことが基本です。

しかし、表に示すように、個々のアミノ酸はそれぞれ特有の性質があるので、それらの多い少ないによって間接的にも体に影響することがあります。

一般に植物性のタンパク質は必須アミノ酸のメチオニンが少ないので、スコアは低いのですが、タンパク質の材料に使われないアミノ酸を尿素に変えて排泄する作用を持つアルギニンが多く含まれるので、肝臓の負担を和らげることになり、肝硬変患者の食事などに適当とされます。


個々のアミノ酸の特性

必須アミノ酸特性
リジンカルシウム吸収の促進、カルニチン(ビタミン)の原料
スレオニンセリン(アミノ酸)の原料
メチオニン肝臓の解毒作用、システイン(アミノ酸)の原料
トリプトファンナイアシン(ビタミン)や脳内精神安定作用物質セロトニンの原料
フェニルアラニンチロシン(アミノ酸)の原料
分岐鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)肝疾患、手術後の輸液によるタンパク質代謝の改善
ヒスチジン副交感神経の鎮静作用(大人では必須性は認められない)
非必須アミノ酸特性
グルタミン増殖細胞、腸管組織における必須性
アルギニン免疫能力の改善、一酸化窒素(NO)生成による血液拡張作用、アミノ酸代謝の促進
アスパラギン酸カリウム、マグネシウム等のミネラルの運搬
グルタミン酸アンモニア低下作用
タウリン胆汁酸生成、コレステロール低下作用、新生児の網膜形成促進
システイン乳児では必須性、グルタチオンの原料
ガンマアミノ酪酸GABA、脳神経伝達物質
チロキシン(T4)甲状腺ホルモン

体液や細胞のなかには、ごくわずかな量ですが、タンパク質の形ではなく、ばらばらのままのアミノ酸が見い出されます。これらは、タンパク質が作られる前の材料と、タンパク質のターンオーバーで分解されたものとが入り交じったものです。
また、一部のアミノ酸は、タンパク質の材料とはならず、種々の特殊な生理作用を発揮するものもあります。血圧降下作用のあるタウリンや、ガンマアミノ酪酸(GABA)などはその例です。

前に述べたMOF輸液の場合でも、特定のアミノ酸の効力の考え方が取り入れられており、必須アミノ酸以外のものについても種々検討されています。

次にアミノ酸ごとの特性を列挙してみましょう。

【リジン】
リジンは必須アミノ酸のなかではメチオニンとともに世界的にもっとも生産量が多いアミノ酸です。これら二つのアミノ酸は動物性のタンパク質に多く含まれています。体のタンパク質の半分以上を占める筋肉をはじめ、いろいろな臓器のタンパク質がどんどん増えて大きくなるためには、材料としてのリジンやメチオニンの必要性が特に高いことを意味します。
微生物から工業的に生産されたリジンは、主に豚や鶏など畜産関係への利用に向けられます。これらの動物の飼料としてトウモロコシや大豆などが使われていますが、大豆はリジンの含量が高いのでトウモロコシに比べて問題はあまりありません。しかしヨーロッパ方面では、アメリカやアジアに比べ大豆の栽培面積がまだ少なく、トモロコシ主体の飼料にリジンを添加したほうがずっと安く済み、これによって動物の成長は明らかに改善されます。
このようにタンパク質の栄養問題は、ヒトよりも家畜の生産現場で、より明確に評価されます。
このほかリジンの特殊な作用としては、カルシウムの吸収を高めたり、脂肪の代謝に必要なカルニチンの原料となることが知られています。カルニチンは新生児や血液透析時に不足となることがあるのでビタミンとして扱う研究者も多いようです。

【メチオニン】
メチオニンは必須アミノ酸として体タンパク質の材料となるだけではなく、一部は含まれている硫黄部分をアミノ酸システインとして移行します。

【システイン】
システインはグルタチオン(40頁)など特殊な生理作用を持つ物質の原料として使われ、新生児ではメチオニンからの生産では間に合わない場合もあり、必須性が高いといわれます。

【トリプトファン】
トリプトファンは必須アミノ酸の中では最も少なくて済みますが、体の中でいろいろな重要物質に転換します。
ビタミンのナイアシン欠乏症でペラグラという重い皮膚炎や精神障害などを伴う症状がトウモロコシ主食の住民に多く見られましたが、これはトウモロコシのタンパク質中にトリプトファンが少ないことが原因でした。
 すなわち、トリプトファン からナイアシン1 が作られるのですが、もともと少ないトリプトファンがタンパク質合成の材料に回されるために、ナイアシン欠乏となるものと説明されています。
トリプトファンの最も重要な役割は、脳の神経伝達物質セロトニンに変わり、さらにメラトニンを作ることですが、これらの物質は精神状態を安定にする作用があります。
夜寝る前に温めた牛乳を一杯飲む習慣にはいろいろな効果がありますが、そのなかで、よく眠られるというのは、牛乳中に多く含まれるトリプトファンの精神安定作用によるものといわれています。



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